海外モバイル作戦:名付けて『ミッション"1"』
フランスとスペインからのインターネット接続マル秘テクニック


 まあ短期でクライミングに行く人がパソコン持って行くこともないだろうし、長期ツアーに出かけられたとしても、安く上げるためにキャンプ場泊まりにする場合は、ちょっとパソコンとテントは相性が悪そうだし...といった具合だろう。

 おまけに最近はいろいろなところにインターネット・カフェがあるし、おまけに海外とはいえ日本語で読み書きできるパソコン環境が整っているインターネット・カフェもあるので、わざわざ自分のパソコンを持って行く必要もないかもしれない。ただしインターネット・カフェでメールをチェックする場合は、YahooとかHotmailといったインターネット(ウェブ)・メールのユーザーじゃないとできないだろうけど(このインターネット・カフェについては、当方コメントできません。利用したことがないので)。

 それに海外ツアーに出かけてアパートを借りるところはだいたい岩場の近くなので不可避的に田舎の村となり、そんなところにはさすがにインターネット・カフェなどない。公衆電話機一台のみ。実はフランスでもスペインでも公衆電話さえない集落に滞在したこともあった。いずれにしても、そこで真のモバイラーの実力を発揮しなくてはならなくなる。いやまあレストの日に近くの大きな街まで出かけていってインターネット・カフェを利用するっていう手段もあるけど、それだとインターネットとかパソコンの持つ簡便性が生かせない。まあインターネット・カフェにわざわざ出かけて行くことがめんどくさいが本音だけど。

 じゃあなんで海外にまでパソコン持って行ってメールをチェックするのと聞かれたら、日本に帰ってから溜まりに溜まったメールを見るのが面倒だから。それにメールのほうが手で手紙を書くより簡単だから。もちろん自分で取った写真を添付できるし。ここまで書いて、なんとなく当方がめんどくさがり屋の印象を与えそうなことに気がついたが、「めんどくさがってやらない」のではなく「めんどくさがって別の方法を編み出す」ってところに人類進歩の原動力があるはず、が当方の持論。めんどくさいからこそ工夫して新しい何かを習得したり編み出したりできるのである。だから面倒だと思うこと自体は悪くはない。

 おっとここで軌道修正。今回は、クライマーに限らず日本をちょっと出た人が自分のパソコンをインターネットに接続するひとつの方法をここで紹介してみたい。

 と言っておきながら、まずはもう10年ほどになる当方の海外モバイル歴から。もちろん、そこまでインターネット中毒になっているわけではないけど。最初に海外クライミング・ツアーにパソコンを持っていったのは、ツアー中にもチョコチョコっと仕事(?)ができるのと何か疑問がわいた時すぐ調べられる環境が欲しかったからだ。だから初代富士通ナントカかんとかというノート・パソコンを使っていた時は、パソコン本体のほかに外付けだったCDドライブと百科辞典、広辞苑、国語辞典などなどのCD5,6枚を持って出かけていた。おまけにその時は富士通という純日本人気質の機械だったので付属品のACアダプターが240Vまで対応というものではなく、変圧器まで持って行く必要があった。このへんのものは飛行機に乗るときトランクに入れて預けるわけにはいかないので、小さなザック(ビジネスマンならアタッシュケースだろうけど)に入れて機内持ち込みにするわけだけど、そうするとヨーロッパの飛行場での搭乗前の荷物検査で引っかかりよく中身をひろげさせられた。X線装置にザックを通したとき、複数の電子機器に電線ニョロニョロっていうのはウサン臭かったのでしょう。変圧器といえば、一度などは日本で小さいのを買いすぎてスペインに着いて使ったらすぐ焼ききれてしまった。で、現地(地方都市)で苦労して手に入れたのは真空管ラジオ受信機の中のトランスといった感じの鉄の塊。重たかったけどせっかく買ったんだからと帰国の際にトランクに入れたはいいけど、飛行機に乗るトゥールーズ(フランス)の飛行場で、しっかり調べられました。灰色の鉄の塊から電線がヒョロヒョロって出てるのやっぱり何となく変なんでしょうね。トランクを開けられたのは、この時が最初で最後だったような気もする。この存在感たっぷりの変圧器、地中海はマジョルカ島のスーパーで買った無骨なAC・DCアダプターと並んで今でも時折使われている。

2001年の夏、
スペイン・アラゴン地方、コルンゴ村のアパートにて。
右隅にパソコン一式。
D-manも勉強中。

 二代目のノート・パソコンは生まれは中国でも国籍は米国のDELL社製だから、ACアダプターは100Vから240V対応で、変圧器必要なし。ハード・ディスクも大きいので百科辞典、辞書類すべてハード・ディスク内にコピーで、CDドライブとかCDを持つ必要もなし。機内持ち込みのザックの中もやっとすっきりしました。

 さて今からやっと具体的な説明にうつる。文章にすると長ったらしくなるので(D-manには最近ウンチク爺と呼ばれている)、ここでは箇条書きして簡潔をこころがける。
 まずは必要な道具とプロバイダーについて。

1.ノート・パソコン:
 バッテリーさえ長持ちするやつならどんなものでも可。電話回線に接続することになるのでモデムが気になってくるけど、初代の富士通のパソコンを持って出た時、モデムが海外対応かどうかなんて考えもしなかったけど実際に使えたので、あえて気にしなくてもいいんでしょう。海外でも使えるモデム内蔵パソコンという宣伝文句を時々見かけるけど、パソコンの世界に国内、国外なんていう概念がいまさらあるんだろうか。

2.音響カプラー:
 これは必需品。その昔インターネットが普及する以前、ニフティとかのパソコン通信なるものが存在したので、それを使った経験のある人なら見たことがあるんだろうけど、現代(?)人にはちょっと想像のつかない代物。写真にあるように電話機の受話器とほぼ同じ形をしている。非常にレトロな雰囲気を持つ。
  日本の公衆電話のほとんどにはパソコンを接続するためのジャックがついているけど、フランスやスペインでそんな公衆電話など見かけたことはない。サーカーのワールド・カップ開催を機に新築されたフランス・マルセイユの飛行場の、確かトランジットの廊下でジャックの付いた公衆電話を見たけど、そのジャックがパソコン接続用のものかは未確認。いづれにしても、音響カプラーなしでは公衆電話からのインターネット接続は不可能と考えるべし。

3.海外にアクセス・ポイントを持つプロバイダー:
 まずは結論から言うと、AOLが一番確実かつ早い。 右下の写真はAOLダイヤル・アップ接続用ソフトのサイン・オン(ダイヤルを回し?始める前)の画面。
 我家は日本では「ぷらら」というプロバイダー経由でインターネットを利用しているけど、AOLは海外に出た時にダイヤル・アップ接続するためだけに会員となっている。もちろん「ぷらら」のユーザーとして、そこが提携している世界規模のプロバイダーのアクセス・ポイントを利用させてもらう「ローミング」という手段もあるけど、接続がスムーズにいかない(本人確認などに時間がかかる)時が多いし、メールを送信したり受信したりするのにも時間がかかる。まあ「ローミング」は、人の家のポストに自分の郵便物を届けてもらう、またはその家の人に頼んで手紙を郵便局まで持って行ってもらうようなものだから、その人が留守だったら郵便物を受け取れないし、忙しかったらさっさと郵便局に行ってもらえないと言ったところだろう。でも、AOLはそもそも世界各地に自社のアクセス・ポイントを持つのの一連の処理がテキパキとできるのは最大の利点。
 ここで一つ大切なことを。フランスでは公衆電話からはインターネット網に入ることができない(コンピュータを呼び出せない)。もちろんホテルの電話からはOKだけど。Minitelという全国規模での独自の情報システムを世界に先駆けて整備したフランスにしては「なぜ?」っていう疑問がわくけどが、まあ電話システム(公衆電話のそれと家庭用電話のそれ)とかの違いなんでしょう。たしかに日本ではほとんどの公衆電話機がパソコンを接続できるようになっているとしても、そんなことをしている人はいない。いずれにしてもフランスの公衆電話からはAOLといえどもアクセス・ポイントに接続できないので、スペインにあるAOLのアクセス・ポイントに接続することになる。で、隣国とはいえ一応国際電話をかけることになるので、よけいにアクセスしてメールを送受信する時間が短いほどいいのです。
 「ローミング」についてだけど、かつて何度かこのサービスを試しに使った時、受信はできても送信はできないということがあった。それは一般的にプロバイダーのメール送信用のコンピュータ(SMTPサーバー)が自分の会員以外に使われてしまわないように制限がかけられていることによる。「ローミング」の手続きを日本でしたはずなのに、アクセス・ポイントを貸している地元のプロバイダーのコンピュータに「受信はしてもいいけど、ウィルス・メールなどの送信に使われる可能性もあるから会員じゃない人の送信はだめだよ」と言われているようなもの。「あれれ、日本でちゃんと手続きしたのに」と抗議しても、もう遅い。
 でも最近、プロバイダーによっては"POP before SMTP(送信前の受信)"というサービスを開始した。これは、例えばAとBの2つのプロバイダーの会員になっているD-manが、まずAのプロバイダーでインターネットに接続してBのプロバイダーにある自分の"私書箱"を使って手紙を送ったり受けたりすることを可能にするサービス。"POP before SMTP(送信前の受信)"という名前は、受信の際には必ず本人確認をするので、まず受信行為をして本人だ-怪しい人ではありませんよ-とコンピュータ(サーバー)に認めてもらってから、送信するところから来る。我家が会員になっている「ぷらら」もこのサービスを提供しだしたので、2004年の12月にスペイン・カタルーニャに行った時に試してみた(AOLでインターネットに接続して、常時使っている「ぷらら」でメールを送受信した)。でも、送受信にやけに時間がかかって電話代がかさんだり、理由は不明だけどメールによっては送信が中断するなどの不都合もあったので、結局はいつものようにAOLのソフトでメールのやり取りをした。まあプロセスはシンプルにしたほうが問題は少ない、さしづめクライミングでなら基本的には手数を少なくしたほうが間違いが少ないといったところか。
 ただ、AOLは接続してメールを送受信するのがスムーズだとはいいながらも、いつも日本で自分が使っているプロバイダーのところに来るメールは、もちろん受け取れない。ゆえに、いつも使っているプロバイダーでメールの転送手続き(そのプロバイダーに着いた自分のメールを全てAOLのほうに転送してもらう手続き)をしておく必要はある。またメールを送信したり返信したりする際に、もちろんAOLのメール・アドレスとなるので、この点で少々混乱が生じるかもしれない。いつも自分が日本で使っているメーラー(インターネット・メール・ソフト)を使えたほうが、メールの整理という面ではスッキリしているんだけど。
 我家がインターネットを利用しだした時、地元のインターネット・プロバイダーとAOL-共にダイアル・アップ接続-の2本立てで始めたので、ブロード・バンドの常時接続時代になった今でも、その時の名残みたいに国外に出た時に使えるからとAOLの一番安いダイアル・アップ接続会員であり続けている。でも、いまさら、海外に出た時にメールのやり取りをするためにAOLの会員になるだけの価値があるかは、皆さんの判断しだいです。

4.電話回線アダプター(フランス仕様):
 公衆電話からのアクセスを試みるためには上記の3点があれば充分だけど、ホテル泊の場合に持っていると便利なグッズ。音響カプラーさえあれば絶えずなんとかなるけど。
 フランスでは壁にある電話回線モジュラー・ジャックの形が日本のそれとは違うので、左の写真のようなアダプターが必要。部屋に電話のあるホテル泊なら、これを使えば自動接続が可能。手で電話番号を入れる必要なし。公衆電話からはだめなフランスでもホテルの電話からならインターネット網に入れます。
 スペインは電話回線モジュラー・ジャックは日本のそれと同じ形なので、日本でダイアル・アップ接続時に使う接続ケーブルだけを持って行けばよし。

5.電源コンセント形状変換用アダプター:
 直接今回のテーマとは関係ないけど、ノート・パソコンのバッテリーを充電するためにも、必ず電源コンセントにACアダプターをさすはず。日本の電化製品の電源プラグは二枚の板状の金属だけど、フランスやヨーロッパでは二本の棒が突き出ている。ゆえにコンセントの形も違うので、ご注意を。
 昔、スペインのマジョルカ島に行った時、持って行くのを忘れたけど、現地のスーパー・マーケットの電気屋で見つけた。でも、これもマジョルカ島がいろいろな国の人の来る観光地だからだったんだろう。いつでどこでも手軽に手に入るとは思わない。

 次は具体的な操作手順を説明しよう。

1:電話ボックスに入る(あたりまえ)。
 基本的にはどんな公衆電話機でもいいんだけど、右の写真にあるように電話機の横にパソコンを置ける台があるものを選ぶこと。また、小銭を用意する手間を省くためにも、テレフォン・カードが使える電話機のほうがベター。むしろフランスではテレフォン・カードしか使えない公衆電話機の方が多い。
2:受話器をはずして音響カプラーと合体させる。
 向きに注意。耳は口、口は耳に(要は両方とも同じ側からコードが出ているように合わす)。音響カプラーと受話器とをくっつけた塊は、電話機の上に置いてもいいし、そのスペースがなかったら受話器のコードを頼りにして宙ぶらりんにしておいても大丈夫。むしろぶら下げておいたほうが、電話ボックスの脇を通りすぎる車の振動が伝わらないのでベターという話。
 音響カプラーの設定は、受信レベルを調整できるが、通常の”1”以外で使ったことはない。

3:音響カプラーをパソコン本体に接続してシステムを起動させる。と同時に、電話機のタイプによるけど受話器掛け自体か受話器掛けのところにある突起を指で押して、さも受話器がまだ掛かっているかのように電話機をだましておく。(通話中の状態にしないってこと。)

4:システムが立ち上がったら、AOL接続ソフトを起動させてサインオンの小窓を出す。
 で、ここで『ミッション"1"』という名の由来となったテクニックが必要となる。通常は設定時にアクセス番号(アクセス・ポイントの電話番号)を入れるんだけど、ヨーロッパの公衆電話の受話器は感度が悪いようで、パソコンから出て音響カプラーを介して信号音に変えられた電話番号を聞き取れない。そこで、事前にアクセス番号(アクセス・ポイントの電話番号)の欄に"1"といれておく
 ちなみに日本の公衆電話でわざわざ音響カプラーをくっつけてためしてみたけど日本の公衆電話の受話器は感度良好。ちゃんと信号音を理解していました。でも考えようによっては日本の公衆電話なんでそんなに感度よくしてあるんでしょうね。ヨーロッパの公衆電話、充分最低の努めは果たしてるのに。

5:電話機をだましていた指を放して電話番号を押しなさいという表示が出たら、接続ソフトのサインオンのボタンを押してパソコンが「ピィ」("1"という声)と言ったら、電話機の数字ボタンを指で押して(?)アクセス・ポイントの電話番号を実際に入れる。
 幸いなことにあちらの受話器は耳が遠く「ピィ」("1"という声、正規の電話番号よりはるかに短い音)さえも理解しないので、この信号音による干渉はおきません。電話機はパソコンからの信号に気づかず、押された電話番号に生まじめに接続を試みる。
 もちろんフランスもスペインも『テレフォン・カードを入れて下さい』とか『電話番号を押して下さい』といった指示はそれぞれの国の言葉で表示されます。でも恐れることなかれ。雰囲気でわかります。

6:あとは接続が確立されるのを待つだけ。
 アクセス・ポイントに電話が繋がれば、あとは向こうのコンピュータ(サーバー)とこちらのパソコン同士が「ピィーピィ〜ほにゃらら、ピィーピィ〜ほにゃらら」と人間には理解不可能な言葉でコミュニケーションを始め、本人検めが終わればアクセスが成立。

 以上が接続するまでの手順ですが、その後はAOL接続ソフト上でオートAOLを選択すればメールの送受信と通信の切断が自動的に行われます。そしてパソコンのモニター上に接続終了のメッセージが出たら、電話機の本来なら受話器が掛かって通話を終了する突起を指で押して終わり。これを忘れると電話代を取られ続けるのでご注意を。そりゃそうでしょう、受話器は音響カプラーとくっついてるんですから。

文責:管理人「よぼよぼ」

 追記@:一般のホーム・ページを見るには公衆電話回線では速度が充分ではなくイライラさせられるだけです。時々我家はD-manのホーム・ページの掲示板にフランスやスペインから書き込みますが、もちろん事前に文を書いておき、それをすばやくコピー・貼り付けしたりして電話代を極力押さえるようにしています。まあ電話代が気にならないのなら、ゆっくりできますが。

 追記A:このページの内容に関する質問がある場合は、掲示板に書き込んでおいてください。できる範囲で、お答えします。